アウトリーチ和太鼓で分かち合う喜び
しまね伝統芸能祭の地域交流プログラムとして、島根県益田市匹見町を拠点とする太鼓打ち今福優さんと、「今福座」メンバーの堂本英里さんによる和太鼓アウトリーチを、島根県立浜田ろう学校で年間3回開催しました。
日本の伝統楽器「和太鼓」を通じて、4名の子ども達が自分を表現することの大切さや、音楽の楽しさを学ぶ中で、 今福さんが感じたことや、未来に繋げていきたいことをお聞きしました。
■今回の3回の和太鼓アウトリーチで感じたこと、子ども達の成長へのアプローチはどのようなものでしたか。
最初は子ども達も緊張していて、恥ずかしさや自信のなさが表情にでることもありました。 自分に自信がないと積極性がなくなってしまうのですが、今回は1回きりではなくて複数回続けて和太鼓体験と交流ができたので、次第に子ども達にも笑顔が生まれ安心しました。
回を重ねるごとに子ども達の「おもしろい!」「もっと打ちたい!」という気持ちが強くなってくるのを感じて嬉しく思いました。また、自信のなさなど自分の気持ちの中に乗り越えるものがある子が笑ったり喜んだりすれば僕も余計に嬉しく感じますし、本当の歓びが伝わってきます。 アプローチについては、子ども達はそれぞれの個性があるので、誰がどんな性格かというより一人ひとりを好きという気持ちと、信じる気持ちで太鼓が上手になってほしいと思って教えました。 和太鼓を通じて、これまでできなかったことができるようになるという嬉しさを感じることが大事だし、格好よく打てたり、リズムが上手にできたら一緒に喜ぶことで、どんどんやる気も出てきます。 まずはやる気が大切なので「嬉しい、楽しい、面白い」とやる気に繋がるようにハイタッチで喜びを共有し、大きな声で声掛けをしました。 それが伝わると僕らも嬉しいし、少しずつ伝わっていくことでまた次にチャレンジしたくなるのだと思います。
■それは技術的なことだけでなく、和太鼓の楽しさを一緒に共有するということでしょうか
そうですね、続けながら様子を見ていると、打つ人の気持ちがバチの振りや表情で直接的に感じられます。 まずはそういった“楽しい、嬉しい”と感じる気持ちで打つというのが大切だと思いました。
■『和太鼓を打つ』という体験を通じて、子ども達には沢山のことが伝わったと思います
それが和太鼓の力だと思います。 様々な表現や芸能があり、それぞれの伝え方や魅力があると思いますが、和太鼓は自分の思いを打ったらその分だけ音や振動が返ってくるのが強みであり魅力だと感じています。 また、太鼓は打つと同時に声を出してもいいし、唄を歌ってもいい、打ちながら表情で表してもいいし、踊ってもいい、どんな人でも全身全霊出せることも魅力です。 和太鼓を通じて彼らの持っているいいところを見つけ、伸ばすことで、できないことができるという自信に繋がりますし、自分では気づかなかった能力を見つけられるかもしれません。それを導き出すのも僕たちの役割だと感じています。
■子ども達から受ける刺激はありますか?
僕たちの指導の技量が問われます 笑。 伝えるということは時間がかかるので、少しオーバーに言ってみたりジェスチャーを入れたりしました。 そこで僕自身もこんな教え方や伝え方ができるんだと感じられましたし、全ての表現を使って伝えなければ気持ちは伝わらないんだという気付きや、自分自身を引き出す機会にもなりました。 その気持ちをもって続けることで、子ども達の集中力や真剣さ、なんとか打とうとする思いが目の輝きで伝わってきました。その目を見ると僕も増々真剣になって、よし精一杯教えようと思えました。
■和太鼓体験を通じて伝えたいこと
太鼓を好きになってほしい、上手くなってほしいと思うのと同時に、スポーツやどんなジャンルにも言えると思うのですが「人間を育てること」が一番だと思っています。 和太鼓を通して引っ込み思案な自分を逆に笑い飛ばすくらいの笑顔でたくましく生きていってほしいと思います。 笑顔は自分の負の心を乗り越えた笑顔。たくましさは挑戦する心です。笑顔でたくましく、めげずに努力する人間に育ってほしいと思います。
■和太鼓体験を通じて伝えたいこと
太鼓を好きになってほしい、上手くなってほしいと思うのと同時に、スポーツやどんなジャンルにも言えると思うのですが「人間を育てること」が一番だと思っています。 和太鼓を通して引っ込み思案な自分を逆に笑い飛ばすくらいの笑顔でたくましく生きていってほしいと思います。 笑顔は自分の負の心を乗り越えた笑顔。たくましさは挑戦する心です。笑顔でたくましく、めげずに努力する人間に育ってほしいと思います。
■和太鼓アウトリーチやワークショップで、大事にしているものはなんですか
昔から親や大人が子ども達へ伝えていることが大事だと思っています。 あいさつ、履物を揃える、人のものはとらない、嘘をつかない、今を懸命に生きるなど先祖から受け継ぐ生き方の基本を和太鼓の中で伝えていきたいです。 偉そうなことは言えないですが、僕自身もいろいろと迷った時には人としてどちらがいいのか、人間として正しいのかで判断したいと思っています。自分の損得ではなく「人として正しい生き方」、今回もそれは思っていました。 子ども達にあまりに気を遣いすぎたり、機嫌をとりすぎたり、あれを言ったら逃げてしまうから伝えるのをやめよう、というのは違うと思っています。やっぱり正しいことは伝えられる機会をみて、コミュニケーションをしっかりとって、気持ちが通じ合った上で今だと思ったらきちんと教えることも必要だと感じています。 これから社会に出ていく子ども達にやっていいこと、だめなことに対して行動が伴えるように大人が伝えていけたらと思っています。
■最後に子ども達へのメッセージ
“感動”ある演奏を一緒に力を合わせてやりたいです。 それが自信に繋がり、新しい一歩になると思います。 目標は演奏になりますが、その前に自分がやる気を出すところまでいくために、人に喜んでもらったり、自分自身が楽しくなることが大切です。 まずは小さいことだけれど、できないことができるようになる喜びを感じること。打てないリズムが打てるようになるというのを積み重ねること。その最終結果が感動ある演奏に結びつくと思っています。 なので感動とはどういうものなのかを感じてほしい。 一生懸命さや必死さ、集中力は観る人に伝わります。 失敗してもそこに一生懸命さ、必死さ、生きる命の輝きがあれば人は感動します。そういう演奏をしてほしいし、一緒に力を合わせてやっていきたいと思っています。 みんなは太鼓を打つまでに乗り越えるものや苦労がありますが、だからこそ一生懸命太鼓を打てること、みんなと演奏できることは最高なんじゃないでしょうか。 和太鼓を通してできる限りのことを体験し、自分を発見し、自分の殻をやぶってほしいと願っています。
【プロフィール】 今福 優 島根県益田市匹見町を拠点として活動している太鼓打ち。24歳の時に田耕(でんたがやす)氏率いる和太鼓グループ『鬼太鼓座』に入座、国内外の公演に参加。4年後に脱退したのち、7年間のサラリーマン生活を経て3尺1寸の大太鼓を含む太鼓一式を購入、ソロ活動を開始する。その大太鼓の打ち込みに定評があるほか、自身のふるさとに伝わる石見神楽を舞台用にアレンジした作品も数多く生み出している。2004年~2008年、東京で開催されてきた『青山太鼓見聞録』に出演。近年ではフランス・オーストリア・カナダ・モロッコなどへの海外遠征も行う。また、後進への指導にも力を入れており、和太鼓を通じた子供の育成や学校公演も精力的に取り組んでいる。
堂本 英里 岡山県出身。1995年に石川県で開催された太鼓フェスティバル『壱刻壱響祭』で今福優の「神祇」の演奏を観て和太鼓を始める。1998年からの5年間は石川県にある浅野太鼓楽器店で太鼓製造に携わりながら和太鼓チームに所属、国内外での演奏経験を積む。2000年より今福優に師事、石川と島根を往復しながら芸の習得に励んだのち、2003年島根県に移住。島根県在住スタートと同時に地元道川神楽社中に在籍。保育園から中学生まで子供対象を中心とした太鼓指導も益田市、浜田市などでおこなっている。
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